『ハーレーダビッドソン!!』

この言葉を聞いて、

「ああソフトバンクの外人さんでしょ?」

と、言ったうちのおかん以外は、間違いなく大きなバイクを連想するであろう。そう、皆さんが連想した通りの、あの屈強なボディ!! けたたましい爆音!! 『俺がバイクの王様だ!!』と言わんばかりの存在感!!そうあのキング・オブ・バイクのハーレー様である。

前置きはともかくとして、今から約15年前位に会社の後輩が一人暮らしの私のアパートに遊びに来たときの話である。今思い返してもアンビリーバブルである・・・。

「トミーさんの家、今日泊まりがてらで遊び行っていいすか?」

「え? おっおう・・・。別にええけど。じゃ、ゲームでもやって遊ぶか・・・?」

会社の後輩(以後K男)というのは、私が以前勤めていた会社でかわいがっていた奴で、(今もある意味かわいがっているが・・・。)良い風に言えば、松坂投手をふっくらさせた感じで、悪く言えばただのデブである・・・。

当時は、ことのほか仲が良いという訳でもなく、2回ほど飲みに行っただけだったので、こいつがどういう奴なのかあまり把握していなかった。あまりに唐突に
『俺のアパートに行く!!』 等と言い出すので、それも泊まりで!!

(もしかしてこいつ・・・。ホ○?)
と一抹の不安を抱いたりもしたが、

( ま、さすがにあからさまにすり寄って来たりせーへんやろ。)
と、かる~い気持ちでOKしてしまった。

それが大事件の始まり!!

とはつゆ知らず、一人では不安だったので(やっぱりかい!!)、仲の良い友達のA君をさそい、私のアパートに3人で帰ったのである。



築40年は過ぎているであろう、我がボロアパートに着いた3人は、途中のコンビニで買ってきたビールとお菓子類を畳に広げ、即席の宴会?を行った。宴会も架橋(笑)に入った時に

「なあ、K男。お前趣味って何?」
A君が突然聞き出した。

「そうですねえ・・・。 パソコンいじくる事か・・・後は・・人間ウォッチングとかかな~。」

「人間ウォッチング!!??」
私とA君がハモった。

「はい。おもしろいですよ。特におっちゃんの方が、女性より表情とか見てるとおもしろいですぅ・・ね。はは。」

「お、おっちゃん!!??男やんか!!」

私は思わず声を上げてしまった。

(やっぱり怪しい・・・。こいつ俺をねらってるんか?)

「ちゃいます、ちゃいますよ~。勘違いしないで下さい。ただの趣味なんで、僕はノーマルですから!!」
と、上目使いでこっちを見るK男がますます怪しく感じる。

「ふーん。K男ってパソコン得意なんやな・・。」
A君が言った。

おーいA君ひっかるとこちがうがな。『パソコン』じゃなくて『おっちゃんウォッチング』にひっかかって!!

「そんなことより、僕もう眠いっすよ。もう寝ませんか?」
K男がでかい顔をこすりながら言った。

「そうやな、トミー、そろそろ寝るか?」

(おーい、A君、寝てしまったらあいつの思うつぼだぞ!!あの推定100Kgの巨体に押しつぶされたら、いくら何でも反撃不可能だ!!イタズラされたらなおさら嫌や!!)

そんな事を考えていたのだが、2人の眠そうな顔に根負けし、私は渋々布団を取り出して引いてあげることにした・・・。

もちろん寝る場所は

私→A君→K男

であることは言うまでもない・・・。

「わーい!!僕真ん中ぁー!!」

「うそーん!!」

K男は、巨体を少しジャンプさせ、うつぶせのまま、真ん中の布団に身を投げ出した。 テレビで良く見るアザラシの日光浴のように!!・・・って「わーい」ってなんや(怒)!!

「んじゃ、俺はここで寝させてもらうわ・・・。」
A君は自分がいた一番近い布団に寝転がった。


私も渋々横になり、K男となるべく触れないように、壁にひっつく形で寝ることにした。
(策略や・・・。策略や!このデブめぇー!!!)
等と考えていると、



「グー・・・・・。グ・・・・・。ボゥー・・・。」



(あれ!!いびき!? 寝てる?? はやっ!!)

そう、K男はうつぶせのまま、布団を半分だけかぶり、寝てしまっていたのである。

「いびきうるせーな!!寝れねーよ!!」
A君が起きあがってきた。

「なあ、A君・・・。俺別にそういう人達馬鹿にするわけじゃないんやけど、 K男って男好きなのか?仕草とか・・ほら女っぽいし!! しゃべり方とか・・・。後、急に俺んちに泊まりに来るっていいだすしさ。」

私はそのころ、私よりもK男と仲の良かったA君にさりげなく聞いてみた。

「ああ、なんかみんなに勘違いされるみたいやな。でもあいつ根っからの女好きやで。だってあいつんちのエロビデオコレクションすごいよ。  ありゃレンタルショップオープンできるな。うん。俺も3本も借りちゃった!!ははっ!!」

「マジでー!!??」

(そうか・・・そうだったのか。純粋に私の家に、後輩として遊びに来たいだけだった男をつかまえて、男好きだの襲われるだの、アザラシだの、デブだの考えてす まなかったな・・・。K男よ・・・。おまえが目覚めた時には、トミー家特製の暖かいブルーマウンテンコーヒーを飲ませてやるからな・・・。)

等と考えていた時である。

「ブルーン・・・・・・・・ トットット  ブッブルーン・・・・・ボウ・・ボウ・・・・」

「ん!?何の音だ?」

「さあ?」

何かバイクのエンジン音に似た音が部屋中に響き渡った。

音はさらに

「ぶろーん ぶろーん  バリュッ!!バリュッ!!」

と、先程よりも大きな音となって響き渡った。

「おっおい!何だよ!何か部屋ゆれてねーか!?」
「なんやねん!!地震か?」
「地震って音なるか!?」
「しるかよ !!」

少しパニック状態におちいった2人をしりめにK男はグーグー寝ている。




「あんな大きな音がしたのに、こいつよく寝れるな・・・。」

A君がK男の布団をまくり上げたその時である。

「ぶろーん・・・。」

「ええぇ!!??」

私とA君は思わず顔を見合わした。そう、間違いなくその音は彼のでん部から発せられた音であった。そう、いわゆる




屁(へ)





である。

私たちの想像を遙かに超える大音量!!部屋をも震え上がらせる超音波!!

まさしくそれは未知との遭遇であった。震源地は肛門である。



「ありえへん。ありえへん・・・。」

A君は何かの呪文を唱えるよるに『ありえへん』を連呼していた。そして数秒後・・・。我々は地獄を味わった・・・。




「くっせーーーーーーーー!!!」





なんという事か!!!よく、地震の後には津波に注意しないといけない

というように、大の大人が2人して、基本中の基本を忘れてしまっていた!!

この世のものとは思えない臭いをかいだ我々はその場に倒れこんだ。
レベル6の殺傷能力兵器と化したK男は、幸せそうな顔を浮かべたまま夢の中である。

「この豚野郎!!寝ながら屁こきやがって!!たたき起こしてやる!!」

普段温厚なA君が、餌をもらえなかったチンパンジーの様な顔でK男に近づいた。

「ぶ・・・。」

(あっやばい。今確かに音がした。来るぞ第2波が!!)




「A君、危なーーーーーーーーーーーい!!」




「ぶっぶろろろろーん!!ダス!!

ダス!! ぶりゅりゅーーーーん・・・・

ブリッ!!」




部屋が揺れた・・・。震度5である。

今までで一番大きなそれは、余韻を伴い一人の青年を犠牲にして消えていった・・・。




「ハ 、ハーレー・・・ダビッドソンじゃ、ないんだから・・・。」




小鳥がさえずるような小さな声でA君は、そのまま後方に倒れ、今にも泣きだしそうな顔でこっちを見ている。

至近距離でそれをくらったA君に私は近づき、そっと肩を抱いた。



「大丈夫か!?」

戦争映画の負傷兵を介護する主人公のような私にA君は・・・



「・・・ありえへん・・・。」

私はただ、首を縦に振るしかなかった・・・。



朝目覚めたK男に、我々の鉄拳制裁が振り下ろされたのは言うまでもないが、醤油入りブルーマウンテンをK男が飲んでいた事はあまり知られていない。

彼がホ○でなくても、二度と泊まらせまい!!と、A君と堅くかわした握手を私は生涯忘れる事はないであろう。